債権回収の強い味方!改正民事執行法とは?

債権回収・売掛金回収

2020年4月1日、改正民事執行法が施行されました。債権回収との関係で重要なのは、
①財産開示手続の見直し
②第三者からの情報取得手続の新設
です。一言で言えば、債務者の財産を補足しやすくなり、債権回収が容易になります。

今回は、新しい「財産開示制度」と「第三者からの情報取得手続」についてお話しします。

財産開示手続の見直し

財産開示手続とは何か

裁判所の判決や公正証書があったとしても、何でもいいから差し押さえてくれといって強制執行することはできません。債権者側で、債務者側(支払いをする側)の財産を特定する必要があります。

この財産を特定する手段として、民事執行法には、債務者を裁判所に呼び出し、どのような財産を持っているかを明らかにさせる手続があり、これを「財産開示手続」といいます。しかし、今までの制度では、実効性があまりなく、利用する人が少ない制度でした。2020年4月1日、新しい民事執行法が施行され、この財産開示手続がより強力なものになりました。

新しい財産開示制度はどこが変わったか

  1. 申立権者の範囲が広がった(新法197条)
    今までは、確定判決や和解調書などがないと利用できませんでしたが、今回の改正により、公正証書や仮執行宣言(判決が確定する前の仮の執行力)の判決でも利用できるようになりました。
    簡単に言いますと、今までは、財産開示手続を利用するためには、その前提として、判決の確定や和解の成立という長い時間を要しましたが、今後は、もっと早い段階で利用できるようになります。特に、公正証書の作成は公証役場で行い、裁判をする必要はありませんので、債権回収の有力な選択肢になります。
  2. 財産開示を拒否すると刑事罰が科されるようになった(新法213条)
    今までは、裁判所に出頭しなかったり、財産の内容について嘘をついたりしても、30万円以下の過料という弱い罰則(行政罰)しかありませんでした。しかし、今回の改正より、罰則が強化され、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されるようになりました(新法213条)。つまり、財産開示手続を拒否したり、財産の内容について嘘をついたりすることは犯罪ですので、財産開示手続はかなり強力な手段となりました。

財産開示手続の流れ

財産開示手続の流れは、以下のようになります。
①債権者が裁判所に財産開示手続の申立てをする
②裁判所が財産開示手続を実施する決定をする
③裁判所が財産開示期日を指定し、債権者と債務者を呼び出す
④財産開示期日で、債務者が自己の財産を明らかにする

なお、債権者は、財産開示期日に出頭し、債務者に対して質問をすることができます(新法199条4項)。そこで債務者が嘘をつくと犯罪になりますので、債務者の財産を確認しやすくなり、債権回収の実効性が強化されます。

第三者からの情報取得手続の新設

第三者からの情報取得手続とは何か

財産開示手続は債務者から財産の情報を取得する手続ですが、今回の改正では、債務者以外の第三者からも情報を取得できるようになりました。
具体的には、以下のとおりです。

  1. 金融機関から、預貯金口座や上場株式などの金融資産に関する情報を取得(新207条)

  2. 法務局から、土地・建物に関する情報を取得(新205条)
    *2020年4月1日時点では未施行(2021年5月14日までに施行予定)
  3. 市町村、日本年金機構などから、勤務先(給与債権)に関する情報を取得(新206条)

今までも、「弁護士会照会」という方法で取得できる情報はありました。しかし、照会のための費用がかかりますし、回答を拒否されるところもありましたので、今まで以上に債務者以外の第三者から情報を取得しやすくなります。

もっとも、勤務先の情報を取得できるのは、【養育費等の支払い】と【生命・身体の侵害による損害賠償金の支払い】の場合に限られます。そのため、たとえば売掛金を支払わないまま廃業した個人事業主がどこかの会社に就職した場合でも、その人の給料を差し押さえるため、市町村などから勤務先の情報を取得することはできません。

しかし、ともすれば逃げ得になってしまっていたところを、債務者の勤務先を捕捉し、給料の差押えができるようになったことは画期的です。利用場面は限定されるものの、保護されるべき人が保護される制度になったといえます。

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第三者からの情報取得手続の流れ

①債権者が裁判所に情報取得手続の申立てをする
②裁判所が金融機関等の第三者に情報提供を命じる
③金融機関等の第三者が裁判所に書面で回答する(新208条1項)
④裁判所が債務者に財産情報の提供がなされたことを通知する(新208条2項)

第三者からの情報取得手続で注意すべきは④です。財産情報の提供がなされたことを債務者に知らせるため、これを知った債務者が財産隠しをする可能性があります。そのため、財産情報を取得した後は、スピーディーに差押え手続を行う必要があります。

債務者が支払いをしなくても諦める必要はありません!

取引先からの売掛金回収であれば、支払猶予する代わりに決算書を出させるなど、任意に情報提供させることもできます。しかし、個人が相手の場合、今までは、自宅不動産など捕捉しやすい財産がないと、強制執行で回収するのが難しく、逃げ得になるケースもありました。

今回の民事執行法の改正により、個人が相手でも、預貯金口座や勤務先の情報を得やすくなりました。債務者が支払いをしない場合でも諦める必要はありませんので、債権回収でお悩みの方はぜひご相談ください。

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