自己破産を同時廃止で進めるための5つのポイント

自己破産を同時廃止で進めるための5つのポイント

自己破産には、管財と同時廃止という2つの手続があります。同時廃止は、管財と比べれば、費用も時間もかからない手続ですが、破産の申立人に選択権はなく、最終的には裁判所が判断します。とはいえ、できれば費用も時間もかからない方がいいのは当然ですので、どうすれば同時廃止で進められるのかに関心を持つ方は多いです。

今回は、自己破産を同時廃止で進めるためのポイントをお話しします。

東京地裁破産部における管財の基準

自己破産を管財にするか同時廃止にするかの選択権は裁判所にあり、同時廃止を希望したとしても、そのとおりになるわけではありません。そのため、自己破産を同時廃止で進めるためには、裁判所の判断基準を理解しておく必要があります。

管財になるかどうかの基準は各地方の裁判所によって微妙に異なりますので、たとえば東京で自己破産をする場合、東京地裁破産部の判断基準を検討することになります。

具体的には、以下のとおりです(詳細は「東京の自己破産で同時廃止になるのはどんなとき?」をご覧ください)。

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  • 33万円以上の現金がある場合

  • 20万円以上の換価できる資産がある場合

  • 所有不動産に設定されている抵当権の被担保債権額が不動産処分予定価格の1.5倍未満の場合

  • 資産調査が必要な場合

  • 法人並存型の場合

  • 免責調査が相当な場合

重要なのは「資産調査が必要な場合」で、同時廃止希望から管財になった理由の断トツ1位です(裁判所の調査によれば、令和元年10月は43.5%)。

「資産調査が必要な場合」の基準は、自己破産を申し立てる人が考えるよりも遥かに厳格に判断され、20万円(現金は33万円)以上の資産を有していないことが明白といえる程度に裁判所に説明できないと、「資産調査が必要な場合」になってしまいます。

そのため、自己破産を同時廃止で進めるためには、裁判所から「他に資産があるかもしれない」との疑念を持たれないための事前準備が必須となります。

ポイント1:書類を捨てない

自己破産を同時廃止で進めるためのポイント1は、「書類を捨てない」ことです。

裁判所への説明は、口だけでしても意味はなく、裏付けとなる書類を提出して初めて意味があります。たとえば、収入額を証明するための給与明細・源泉徴収票・課税証明書、預貯金額やお金の動きを証明するための通帳の写し、家計支出や購入品を証明するための領収証・レシート・クレジットカードの利用明細などです。

書類が残っていれば、客観的に証明できますので、裁判所への説明も容易です。逆に、書類を捨ててしまっていると、勤務先に再交付を求めなければならなかったり、再取得に時間がかかったり、再取得が困難な書類であれば、どうしても説明が弱くなったりします。

裁判所への説明に裏付けがないと、「調査の必要」が高まりますので、同時廃止で進めるためには、書類を捨てないことが重要です。

ポイント2:銀行口座をなるべく一つにする

自己破産を同時廃止で進めるためのポイント2は、「銀行口座をなるべく一つにする」ことです。

通帳は、お金の出し入れが記録されており、資産・負債・生活状況を確認するための最重要の書類です。そのため、裁判所が自己破産の審査をする際も、通帳の精査に最も力を入れます(少なくとも、私が裁判所の破産部にいる時はそうでした)。

通帳が少ないと、その口座だけで生活状況が分かりますので、裁判所の審査もスムーズになります。逆に、通帳が多いと、口座間をまたいでお金の出し入れを確認する必要がありますので、説明も審査も手間と時間がかかります。

その他にも、銀行口座を一つにしておくメリットはあります。
銀行口座が一つであれば、その口座だけで家計管理しますので、家計簿を作りやすくなります。家計簿は毎月作る必要がありますので、家計管理しすい方が家計簿を作るのも楽です。

また、東京地裁の自己破産では、申立ての1週間前に全ての通帳を記帳する必要があります。使っていない口座でも10円を入金して記帳するなどし、直近の使用状況を明らかにする必要がありますので、手持ちの通帳が多ければ多いほど、申立ての手間と時間がかかります。
申立てのタイミングが悪ければ、ボーナスが入るなどで資産が増え、管財になる可能性もありますので、スムーズな申立てのためにも、銀行口座は少ない方がいいです。

そのため、自己破産を考えている方は、早い段階で生活口座を一つにまとめ、残りの口座は解約することをお勧めします。ただし、解約した通帳も、自己破産の申立で添付資料として使いますので、捨てずに保管しておく必要はあります。

ポイント3:家計簿をしっかりつける

自己破産を同時廃止で進めるためのポイント3は、「家計簿をしっかりつける」ことです。

家計簿は、通帳とともに、破産手続において極めて重要です。たとえば、通帳に出てこない支出が家計簿に現れていれば、他に口座(=資産)があるのではないかとの疑念を持たれます。

また、家計簿が不自然で、提出書類からは分からない支出が多いと、他に保険の支払いがあるのではないか(=資産があるのではないか)、誰かに返済しているのではないか、遊興費に使っているのではないかなどの疑念を持たれます。

家計簿をいい加減につけると、生活のみならず、資産や負債などでも「調査の必要」ありとされる可能性が高まりますので、同時廃止で進めるためには、家計簿をしっかりつける必要があります。

特に現金だとどこに使ったのか分かりにくくなるため、いくら現金を引き出し、いくら現金で使ったのかの対応関係が分かるようにしておく必要があります。まとめてやろうとすると「大体このぐらい」という概算でしか説明できず、お金の使い道について「調査の必要」ありとされる余地が生まれます。

家計簿をつけるのは面倒ですが、実際の家計支出を知っているのは本人やその家族だけです。弁護士の申立技術だけではカバーできない部分もありますので、領収証やレシートは捨てず、しっかりと家計簿をつけることをお勧めします。

ポイント4:特定の債権者にだけ返済しない

自己破産を同時廃止で進めるためのポイント4は、「特定の債権者にだけ返済しない」ことです。

親族や友人にだけ返済したいと考える方は多いですが、特定の債権者にだけ返済することは、破産手続では「偏頗弁済」として禁止されています(破産法162条)。弁護士に依頼する前の駆け込みで様々なことをしてしまう方もおられますが、同時廃止ではなく管財となり、破産管財人が調査するだけではなく、返済したお金を取り戻す手続をしたりもしますので、逆にその親族や友人に迷惑をかける可能性が高いです。

免責不許可事由(破産法252条1項3号)に当たり、借金をなくしてもらえない可能性がありますし、犯罪にもなりかねません(破産法266条)ので、軽い気持ちで親族や友人にだけ返済するのは避けてください。

また、会社からの借入れを給与天引きしている場合も「偏頗弁済」となりますので、自動的に支払っている借入れも注意が必要です。

ポイント5:財産を誰かにあげない、隠さない

自己破産を同時廃止で進めるためのポイント5は、「財産を誰かにあげない、隠さない」ことです。

破産手続で取られないように財産を誰かにあげたり、隠すために預けたりすると、同時廃止では進められませんので、管財になります。

分からなければ大丈夫だろうと思うかもしれませんが、そもそも自己破産は、「誠実な破産者」の借金をなくすための手続ですので、悪質だと、借金をなくすどころか犯罪になります(破産法265条1項)。偽装離婚で配偶者に財産分与することも問題になりますので、あまり変なことは考えない方が身のためです。

まとめ

自己破産を同時廃止で進めるためのポイントをもう一度まとめると、以下のとおりです。少し手間のかかることもありますが、メリットも大きいので、自己破産を考えているはご留意ください。

  • ポイント1:書類を捨てない
  • ポイント2:銀行口座をなるべく一つにする
  • ポイント3:家計簿をしっかりつける
  • ポイント4:特定の債権者にだけ返済しない
  • ポイント5:財産を誰かにあげない、隠さない
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