改正相続法と遺留分侵害額請求

新しくなった遺留分の制度と注意点

改正相続法と遺留分侵害額請求

2018年の相続法改正

2018年7月6日、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、約40年ぶりに相続法が大改正されました。従来、遺留分減殺請求だった遺留分の制度も大幅に変わり、「遺留分侵害額請求」という制度になりました。請求する内容自体が変わるため、今後は、請求する側もされる側も新しい制度に対応する必要があります。

遺留分減殺請求の問題点

従来、遺留分の制度は「遺留分減殺請求」と呼ばれており、減殺請求すると、遺産の一部を持分で所有することになるという制度でした。

しかし、相続人間で揉めると、①遺留分で取得した持分を確定→②持分を現金化という2ステップが必要で、現金化にかなりの時間がかかる場合もありました(特に相続不動産)。そのため、早期解決を重視すればするほど、遺留分権利者の方が妥協をせざるを得なくなり、それを狙う相手方の引き延ばし策でますます長引くという悪循環になりがちでした。

そこで、相続法を改正し、遺留分減殺請求から「遺留分侵害額請求」という制度に変更することになりました。ポイントは、ストレートに金銭請求できるようになったことです。

遺留分侵害額請求=「お金の請求」

相続法の改正により、遺留分権利者は、多くの遺産をもらった人に対し、遺留分に満たない部分(侵害額)お金で支払うよう請求できるようになりました。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

民法1046条

そのため、今後は、ストレートにお金を請求できますし、支払いを拒めば遅延損害金も発生しますので、相手の引き延ばし策に妥協せずに済むようになります。

2019年7月1日前後の相続かどうかで制度が違う

改正相続法が適用されるのは、2019年7月1日以降の相続です。つまり、2019年7月1日より前の相続は遺留分減殺請求となり、2019年7月1日以降の相続は遺留分侵害額請求となります。相続開始から期間が経っている場合は、どちらの制度が適用されるかに注意が必要です。

遺留分に算入する生前贈与の期間が変わった

遺留分は生前贈与も算入して計算しますが、以前の制度では、判例により、時期を問わず全ての生前贈与が算入されていました。しかし、遥か昔にまで遡ることの問題点もあり、相続開始前10年間になされた生前贈与に限り、遺留分に算入されることになりました。

証拠集めに制限がかかる可能性がある

請求権の内容自体が変わったため、預金口座の取引明細書などの資料収集に制限がかかる可能性があります。実際、従来であれば相続人に出していた資料を出さなくなった金融機関もあります。

遺言で預金を相続した相続人や遺言執行者が動く前に証拠集めをしないと、過去の預金取引を確認できず、生前贈与の実体を把握できないということにもなりかねません。

請求期限(時効)は変更なし

遺留分侵害額請求は「相続の開始と遺留分を侵害する遺言(ないし生前贈与)があったことを知った時から1年間」で時効にかかります。この点は改正相続法でも変更はありませんので、請求自体は早めにする必要があります

まとめ

相続法の改正により、遺留分の制度は大幅に変わりました。遺留分「減殺」請求の時代とは請求するための戦略も変わりますので、別物と考えた方がいいでしょう。

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