不動産の強制執行

不動産は、誰でも不動産登記簿で確認でき、即座に処分できる財産ではありませんので、強制執行の第一候補として挙がる財産です。不動産を差し押さえて処分できないようにし、競売にかけてお金に変え、強制的に債権回収を行います。以下、不動産の強制執行の仕組みを説明します。

債務名義の取得

強制執行をするためには、「債務名義」という強制執行をするためのパスポートが必要です(民事執行法22条)。典型的なものは公正証書(執行受諾文言付き)、確定判決、和解調書などで、単なる合意書や契約書は債務名義になりません。つまり、合意書や契約書があったとしても、すぐ強制執行できるわけではなく、裁判を起こす必要があります。

なお、不動産に抵当権を設定しておけば、債務名義なしで担保権を実行できます。債権額にもよりますが、債務者が不動産を所有しているのであれば、本来、あらかじめ抵当権を設定しておくべきでしょう。

執行文の付与の取得

強制執行をするためには、債務名義に「執行文」を付与する必要があります(民事執行法25条)。執行文は債務名義の効力と範囲を明らかにする文書で、公正証書は公証人が、それ以外の債務名義は事件記録のある裁判所(裁判所書記官)が付与します。

送達証明書の取得

強制執行を開始するためには、債務名義の正本等が債務者に送達されていることも必要です(民事執行法29条)。送達されたことを明らかにするため、公正証書は公証人が、それ以外の債務名義は事件記録のある裁判所(裁判所書記官)が作成した「送達証明書」を取得します。

不動産の特定

債務者の財産を何でもいいから差し押さえてくれということはできず、債権者側で差し押さえる不動産を特定する必要があります(民事執行規則133条2項)。

債務者の自宅が所有不動産の場合、不動産登記簿で調べれば、所有者や担保権の設定状況(共同担保を含む)が分かりますが、自宅以外の不動産は、必ずしも簡単に見つけられるわけではありません。しかし、改正民事執行法(2020年4月施行)で「財産開示手続の罰則強化」「第三者からの情報取得手続の新設」により、今後は、自宅以外の不動産も発見・特定が容易になります(ただし、不動産の情報取得手続は未施行。詳細は「不動産の調査方法」参照)。

強制執行を申し立てる裁判所

不動産の強制執行は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てることによって行います(民事執行法44条)。たとえば、債務者名義の不動産が東京23区にある場合には、東京地方裁判所本庁が管轄裁判所となります。

強制執行の申立て

強制執行は、債権者が執行裁判所に申立てをし、裁判所の手続において行われます(民事執行法2条)。申立ては書面でする必要があります(民事執行規則1条)ので、申立書を作成します。

また、執行文が付与された債務名義の正本、送達証明書、債務者の代表事項証明書(債務者が会社の場合)、不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書、執行予納金、収入印紙・郵便切手などの添付書類等も準備します。なお、債務者の表示が債務名義取得時のものと現在とで異なっている場合には、債務者の同一性を証明するため、住民票、戸籍の附票、商業登記事項証明書などを取得する必要があります。

強制競売開始決定・差押え

執行裁判所が申立てに理由があると認めると、強制競売開始決定が発令されます(民事執行法45条)。不動産登記簿に差押登記がなされますので、財産処分を防ぐことができます。

3点セットの作成・売却基準価額の決定

不動産が差し押さえられると、換価(お金に変えること)の手続に入ります。その前提として、まずは現況調査報告書、評価書、物件明細書の「3点セット」と呼ばれる書類が作成・公開されます。

現況調査報告書

現況調査報告書は、執行裁判所の命令により執行官が行う現況調査(民事執行法57条)の結果を記載した書類で、不動産の物理的な形状や占有者の有無などが記載されています(民事執行規則29条1項)。

評価書

評価書は、執行裁判所の命令により評価人(不動産鑑定士)が行う不動産評価の結果を記載した書類で、不動産の評価額、周辺環境、評価額の算出過程などが記載されています(民事執行規則30条1項)。

なお、執行裁判所は、評価書に基づき、「売却基準価額」(不動産の売却額の基準となるべき価額)を定めます(民事執行法60条1項)。評価書の評価額がほぼ売却基準価額になりますので、評価書を見れば、最低限どの程度の価額で落札されるかが分かります。

物件明細書

物件明細書は、裁判所書記官が買受の参考となる不動産の権利関係を記載した書面で、売却により消滅しない賃借権や地上権(つまり、買受人が負担することとなる他人の権利)の存在などが記載されています(民事執行法62条1項)。

「3点セット」は一般に公開されますが、インターネットでも閲覧・ダウンロードできますので、誰でも簡単に競売情報を入手できます。
*不動産競売情報サイトBIT(http://bit.sikkou.jp/

なお、差押債権者は、一般公開される前に「3点セット」を閲覧・謄写することができます(民事執行法17条)。一般公開前に早期対応しなければならない場合もあります(借地権解除を予防するための代払いなど)ので、必要に応じて一般公開前に「3点セット」の内容を確認しておいた方がいいでしょう。

売却手続

不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行います(民事執行法64条1項)。具体的には、期間入札、期日入札、競り売り、特別売却という方法がありますが、以下、最も利用されている期間入札について説明します。

売却実施処分

裁判所書記官が、売却の日時・場所、入札期限・開札期日を定めます。

入札期間等の通知・公告・公示

売却実施処分後、差押債権者等に対する通知、入札期日の2週間前までに公告、インターネット等による公示がなされます。

「3点セット」の写しの備え置き

入札開始日の1週間前までに、「3点セット」の写しが備え置かれます。

入札

入札期間に入札する方法で買受けの申出を行います。

開札

入札期間満了後1週間以内に開札期日が開かれ、最も高い価額で買受けの申出をした人が落札します。

売却許可決定

売却を許可する場合、執行裁判所が売却許可決定を発令します。

代金納付

売却許可決定の確定後、買受人は期限までに代金を執行裁判所に納付します。

配当・弁済金交付

代金の納付が完了すると、代金を各債権者に配る手続に入ります。

配当手続

競売手続に参加している全ての債権者に全額支払えない場合は、配当表に基づいて配当を実施します(民事執行法84条1項)。

弁済金交付手続

これに対して、債権者が一人の場合や全ての債権者に全額支払える場合は、売却代金交付計算書を作成して弁済金を交付し、その残りは債務者に交付します(民事執行法84条2項)。

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