給与債権(勤務先)の調査方法

債務者の給料(給与債権)も財産ですので、差し押さえて強制執行することができます。しかし、その前提として、相手の勤務先を特定する必要があります。

他の相続人の勤務先は知っている場合も多いですが、知らない場合に勤務先情報を取得する手段として、「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」があります。ただし、「第三者からの情報取得手続」については、利用できる人が限定されており、相続で利用できるケースは極めて限られますので、その点ご注意ください。

財産開示手続

財産開示手続とは、債務者を裁判所に呼び出し、所有する財産を開示させる裁判所の手続です。ペナルティが軽かったため、以前はあまり利用されていなかった手続ですが、2020年4月施行の改正民事執行法で大幅に機能強化されました。これからは、財産の開示を拒否したり嘘をついたりすると、刑事罰が科されます(つまり、犯罪者になります)。

手続の内容は不動産と同じですので、詳細は「不動産の調査方法」をご覧ください。

第三者からの情報取得手続

第三者からの情報取得手続は、2020年4月施行の改正民事執行法で新設された新しい制度です。市区町村や日本年金機構などから勤務先情報の提供を受けますので、たとえ債務者が財産開示期日に出頭しなかったり嘘をついたりしたとしても、第三者からの情報取得手続を利用すれば、債務者の勤務先情報を取得できます。

要件や手続は預金口座の情報取得手続とほぼ同じですので、以下、預金口座とは異なる部分のみ説明します(詳細は「預金口座の調査方法」をご参照ください)。重要な点は、給与債権の情報取得手続を利用できる人が限定されていることです。

預金口座の情報取得手続と異なる部分

①手続を利用できる人が限定されていること

給与債権の情報取得手続を利用できるのは、

  • 養育費などの民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権
  • 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権

の執行力のある債務名義正本を有する債権者に限定されています。

つまり、被相続人(亡くなった方)が、相手方となる相続人に対し、上記のような請求権を有しており、それを相続したような場合にのみ利用できます。

ここが預金口座や不動産との大きな違いで、上記以外の債権者は、財産開示手続で債務者から勤務先情報を引き出すことになります。

②財産開示手続を先に行う必要があること

給与債権の情報取得手続では、預金口座の情報取得手続とは異なり、情報取得手続申立ての日より前3年以内に財産開示期日における手続(民事執行法199条)が行われたことを証明する必要があります(財産開示手続前置)。

そのため、まずは財産開示手続を申し立て、財産開示期日が実施されたことの証明書を取得することになります。

③情報提供決定が発令された段階で、債務者に情報取得手続について知られること

預金口座の情報取得手続では、債務者が手続について知るのは金融機関が情報提供をしてからですが、給与債権の情報提供手続では、情報提供決定が発令された段階で、債務者に情報提供命令正本を送達します。つまり、この段階で、債務者に情報取得手続について知られることになります。

まとめ

当初は債務者の勤務先を知っていたとしても、転職などにより勤務先が分からなくなる場合はよくあります。しかし、調停調書や確定判決などの債務名義があれば、財産開示手続を利用でき、債権の内容によっては、給与債権の情報取得手続も利用できます。

相続の場合、他の相続人の勤務先を知っている場合も多いですが、知らない場合には調査が必要になりますので、その調査方法は重要といえます。

>お問い合わせフォーム(24時間受付)

お問い合わせフォーム(24時間受付)

ご相談・ご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。担当者から24時間以内にご連絡いたします。