預金口座の調査方法

預金口座を差し押さえるためには預金口座を特定する必要がありますが、夫婦や取引先であればともかく、債務者がどの金融機関のどの支店に預金口座を持っているかを知ることは困難です。しかし、2020年4月施行の改正民事執行法で「第三者からの情報取得手続」が新設され、金融機関から預金口座情報を取得できるようになりました。ここでは、「第三者からの情報取得手続」による預金口座の調査方法を説明します。

新設された「第三者からの情報取得手続」はどのような制度か

「第三者からの情報取得手続」とは、2020年4月施行の改正民事執行法で新設された新しい制度です(民事執行法204条~211条)。裁判所が金融機関、法務局、市役所などに命じて債務者の財産に関する情報を提供させる制度で、差し押さえ対象財産の発見・特定が容易になりました。

あらゆる財産が対象となるわけではありませんが、預金口座、上場株式、給与債権(勤務先)、不動産などは対象となりますので、これまでよりも遥かに強制執行のハードルが下がります。そして、強制執行のハードルが下がりますので、回収の困難さゆえに不合理な妥協を強いられるケースも減ることが期待されます。

ただし、不動産については、2020年7月現在、まだ未施行で、2021年5月16日までに開始されることになっています。

どのような情報が提供されるのか

債務者の預金口座について、銀行・信用金庫などの金融機関から情報提供してもらえます(民事執行法207条1項1号)。具体的には、預金口座を差し押さえるために必要な情報、つまり、債務者が有している預金口座の支店名、種類、口座番号、額です。

これまでも、弁護士が所属する弁護士会を通じた調査(弁護士会照会)であれば、預金口座の情報提供をしてくれる金融機関はありました。しかし、第三者からの情報取得手続は法律上の制度ですので、全ての金融機関が応じることになります。そのため、今後は、原則として第三者からの情報取得手続を利用し、一気に複数の預金口座を発見・特定することになると思われます。

預金口座の情報取得手続の申立てに必要なこと

①執行力のある金銭債権の債務名義の正本を有していること

「金銭債権」とは、貸金、売買代金、請負報酬金といったお金を請求できる権利のことです。

「執行力のある債務名義」とは、強制執行認諾文言付きの公正証書、和解調書、確定判決などの書類(民事執行法22条)で、いわば強制執行するためのパスポートのようなものです。

なお、給与債権や葬儀費用請求権などは「一般先取特権」(民法306条)という優先権が付いている債権については、例外的に、債務名義なしで情報提供手続を利用できます。

②執行開始要件を備えていること

債務名義の正本又は謄本が債務者に送達されていること等の執行開始要件を備えていることが必要です。

③強制執行を開始することができない場合でないこと

債務者が破産や民事再生をすると、破産債権や再生債権に基づいて情報取得手続の申立てはできません。破産や民事再生が開始すると、通常の強制執行手続ではなく、破産手続や民事再生手続の中で配当・弁済を受けることになります。

④強制執行が功を奏しない場合であること(強制執行不奏功の要件)

以下のどちらかの事実を明らかにすることが必要です。

  • 強制執行をしたが完全な弁済を得ることができなかったこと
    申立ての日前6か月内に実施された強制執行又は担保権の実行における配当手続・弁済金交付手続において,債務名義に表示された金銭債権の完全な弁済を受けられなかったことを明らかにする必要があります。
  • 強制執行をしても完全な弁済を得られないこと
    債務者が預金口座、不動産、給料などの財産を持っているかどうかを調査し、強制執行をしても、債務名義に表示された金銭債権の完全な弁済を受けられないことを明らかにする必要があります。
    逆に言えば、財産調査によって、債務者所有の自宅不動産などがあり、そちらを強制執行すれば完全な弁済を受けられる見込みがあるのであれば、不動産などの強制執行の方を先に行うことになります。

預金口座の情報取得手続の流れ

①預金口座の情報取得手続の申立て

預金口座の情報取得手続の申立てに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 申立書

  • 執行力のある債務名義の正本

  • 債務名義の送達証明書(家事審判が債務名義の場合は確定証明書)

  • 情報提供を求める金融機関の代表事項証明書

  • (債務者が法人の場合)債務者の代表事項証明書

  • (債務者の特定で必要な場合)債務者を特定するための戸籍謄本・住民票・戸籍の附票

  • 強制執行不奏功の要件に関する資料

なお、申し立てる裁判所(管轄裁判所)は、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所か、(普通裁判籍がないときは)情報の提供を命じられる者(第三者)の所在地を管轄する地方裁判所です。

たとえば、債務者が東京23区や島しょ部に住んでいるのであれば東京地方裁判所(民事執行センター)、それ以外の東京都に住んでいるのであれば東京地方裁判所立川支部に申立てをします。

また、申立手数料(収入印紙)は、1件1000円です。ただし、郵便料金や金融機関に支払う手数料の金額や納付の方法は各裁判所によって取扱いが異なりますので、事前に確認が必要です。

②情報提供決定の発令

申立ての要件を満たしていると判断された場合、裁判所が情報提供をすべきという命令(情報提供決定)を発令します。

なお、申立てが却下された場合、申立人は、執行抗告という不服申立てをすることができます。

③情報提供決定正本の発送

情報提供を命じた金融機関と申立人に対し,情報提供命令正本が送付されます。なお、不動産情報・勤務先情報とは異なり、この段階では債務者には通知しません。

④金融機関からの書面による情報提供

情報提供命令正本の送付を受けた金融機関は、債務者の預金口座情報を書面で提供します(東京地裁の運用では、情報提供命令正本が届いてから2週間以内)。提供の方法は、情報提供書(原本)とその写しを作成し、裁判所に原本・写しとも提出するか、裁判所には原本を提出し、写しを申立人に直送します。

⑤債務者への通知

東京地裁や大阪地裁の運用では、金融機関から裁判所に情報提供書が届くと,裁判所は、第三者から情報提供書が提出された後1か月が過ぎた時点で、債務者に対し、預金口座情報が提供されたことを通知します。

つまり、この段階で、情報提供決定が出たことを債務者に知られることになりますので、預金の引出し=財産隠しのリスクが発生します。そのため、預金口座の情報取得手続で最も注意すべきことは、預金口座情報を取得したら、すぐに強制執行の申立てをしなければならないことです。のんびりしていると、預金を全部引き出され、強制執行をしても空振りになります。

なお、債務者への通知時期は裁判所の運用のため、申し立てる裁判所に事前に確認しておく必要があります。

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