預金口座の強制執行

預金口座は、口座名義人が金融機関に対して有している預金債権(払い戻しを請求する権利)です。預金口座=預金債権を差し押さえ、債権者が金融機関から支払いを受けることにより、強制的に債権回収を行います。以下、預金口座の強制執行の仕組みを説明します。

債務名義の取得

強制執行をするためには、「債務名義」という強制執行をするためのパスポートが必要です(民事執行法22条)。典型的なものは公正証書(執行受諾文言付き)、確定判決、和解調書などで、単なる合意書や契約書は債務名義になりません。つまり、合意書や契約書があったとしても、すぐ強制執行できるわけではなく、裁判を起こす必要があります。

執行文の付与の取得

強制執行をするためには、債務名義に「執行文」を付与する必要があります(民事執行法25条)。執行文は債務名義の効力と範囲を明らかにする文書で、公正証書は公証人が、それ以外の債務名義は事件記録のある裁判所(裁判所書記官)が付与します。

送達証明書の取得

強制執行を開始するためには、債務名義の正本等が債務者に送達されていることも必要です(民事執行法29条)。送達されたことを明らかにするため、公正証書は公証人が、それ以外の債務名義は事件記録のある裁判所(裁判所書記官)が作成した「送達証明書」を取得します。

預金口座の特定

債務者の財産を何でもいいから差し押さえてくれということはできず、債権者側で差し押さえる預金口座を特定する必要があります(民事執行規則133条2項)。

預金債権をどこまで特定すべきかについては、過去、様々な裁判が起こされてきました。しかし、改正民事執行法(2020年4月施行)で「第三者からの情報取得手続」が新設され、金融機関に預金口座の照会ができるようになりました。今後は、強制執行の前に、同手続で預金口座を発見・特定することになります(詳細は「預金口座の調査方法」参照)。

強制執行を申し立てる裁判所

預金口座の強制執行は、原則として、債務者の住所地(会社であれば、原則として本店所在地)を管轄する地方裁判所に申し立てることによって行います(民事執行法144条)。たとえば、債務者が東京23区に住んでいれば、東京地方裁判所本庁が管轄裁判所となります。

強制執行の申立て

強制執行は、債権者が執行裁判所に申立てをし、裁判所の手続において行われます(民事執行法2条)。申立ては書面でする必要があります(民事執行規則1条)ので、申立書を作成します。

また、執行文が付与された債務名義の正本、送達証明書、債務者の代表事項証明書(債務者が会社の場合)、金融機関の代表事項証明書、収入印紙・郵便切手などの添付書類等も準備します。なお、債務者の表示が債務名義取得時のものと現在とで異なっている場合には、債務者の同一性を証明するため、住民票、戸籍の附票、商業登記事項証明書などを取得する必要があります。

なお、複数の金融機関の預金口座を差し押さえる場合、どの金融機関からいくら回収するかを決めておく必要があります(実務上、「割り付け」といいます。)。以前は、この割り付けで悩むことが多々ありましたが、第三者からの情報提供手続を利用すれば、どの口座にいくら残っているかが申立て前に分かりますので、問題は解消されます。

差押命令の発令

執行裁判所が申立てに理由があると認めると、預金口座の差押命令が発令されます。これにより、金融機関は債務者への支払いが禁止されます(民事執行法145条1項)ので、預金の引出しと財産隠しを防ぐことができます。

陳述の催告に対する金融機関の陳述

強制執行の申立ての際、「陳述の催告」を申し立てておけば、金融機関が預金債権の存否や内容を書面で回答してきます(民事執行法147条1項、民事執行規則135条)。差し押さえられたかどうかを確認するためにも、この陳述の催告は必ず申し立てておくべきです。

金融機関からの取立て

債務者に差押命令が送達された日から1週間が経過すると、債権者は差し押さえた預金口座がある金融機関から預金債権の取立てができます(民事執行法155条1項)。金融機関から直接支払ってもらいますので、預金口座から確実かつ強制的に債権回収できます。

なお、供託した場合の弁済金交付・配当や転付命令といった回収ルートもありますが、取立てが原則のため、ここでは割愛します。

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