持ち戻し免除の意思表示

特別受益の持ち戻しを免除して相続分を維持する方法

持ち戻し免除の意思表示
私は、病気で働けなくなった時期があり、その時、父から生活費としてまとまったお金をもらいました。父が亡くなった後、他の兄弟から、生前贈与は「特別受益」になるから、私の相続分は減ると言われました。生前贈与とか大げさなことを言われても困るので、相続分が減らない方法をわかりやすく教えてください。
①扶養の範囲の金額であれば、そもそも特別受益に該当しません。

②特別受益に該当しても、「持ち戻し免除の意思表示」があれば、生前贈与は持ち戻されません。つまり、相続分は減りません。

ゲートウェイ東京法律事務所の代表弁護士の髙橋と申します。

ご依頼の9割以上が相続に関する案件で、特に遺産分割、遺留分請求、使い込み問題に力を入れている「相続に特化した弁護士」です。

今回は、

特別受益の主張に反論して相続分を維持したい人

に向けたお話になります。

もめないことが一番大事な人であれば、ここから先のお話には価値がありません。申し訳ありません。

しかし逆に、形だけの円満相続で後悔したくない人、キッチリした「普通の相続」を実現したい人であれば、これを知っておくだけで全く違います。難しい理屈を論じるときには弁護士が必要ですが、ポイントだけであれば、意外とカンタンなお話です。

特別受益の持ち戻しに反論する方法

相続では、原則として、法定相続分で遺産を分けます。妻2分の1、子4分の1とかの割合はよく聞きますね。

しかし、亡くなった人から、生前、お金をもらっていた場合、法定相続分で形式的に分けると、お金をもらっていない人だけ得することになります。そこで、法律は、法定相続分という原則を修正し、もらった分だけ相続分を減らすことにしました。これを「特別受益の持ち戻し」といいます(民法903条1項)。

「特別受益」というのは、厳密には生前贈与とイコールではありませんが、今回は、生前贈与(生前にお金をもらうこと)と考えてください。

「持ち戻し」というのは、もらったお金の分だけ遺産に戻し、もらった人の相続分を減らすことをいいます。

・相続人:妻(1/2)、子A(1/4)、子B(1/4)
・相続時の遺産:1億
・生前贈与:子Bに2000万円

単純に法定相続分で遺産を分けると、それぞれの相続分は以下になります。
・妻:5000万円
・子A:2500万円
・子B:2500万円

しかし、この分け方だと、2000万円の生前贈与をもらっていた子Bが多くを相続することになります。これを修正するのが、「特別受益の持ち戻し」という制度です。

特別受益を持ち戻すと、それぞれの相続分(具体的相続分といいます。)は以下になります。
・持ち戻し後の遺産:1億2000万円
・妻:1億2000万円×1/2=6000万円
・子A:1億2000万円×1/4=3000万円
・子B:1億2000万円×1/4-2000万円=1000万円

つまり、すでにもらっている相続人は、相続のときにはもらう分を減らされます。

あなたが親から生前にお金をもらっていて、他の相続人から特別受益の持ち戻しを主張されたらどうでしょうか?
すでにもらうものをもらっているのだから、相続分が減るのではないかと思うのではないでしょうか?

しかし、親から生前にお金をもらっていたとしても、特別受益にならない生前贈与でなければ、持ち戻しはされません。親子間の扶養の範囲といえる場合です。まずはここを考えます。

そして、特別受益になったとしても、相続分が減らない場合があります。
この特別受益の持ち戻しに反論する方法が

持ち戻し免除の意思表示

です(民法903条3項)。

「持ち戻し免除の意思表示」という反論を知らなければ、あなたは相続分は減るでしょう。
しかし、知っていれば、相続分を維持できるかもしれません。

知っているかどうかで大きな違いになります。

持ち戻し免除の意思表示とは?

持ち戻し免除の意思表示とは、亡くなった人が特別受益分を遺産に戻す必要はないという意思を示すことをいいます。

つまり、特別受益の持ち戻しに対する反論として、

お金をあげた本人が相続分を減らさなくてもいいよと考えていたこと

を明らかにすればいいわけです。

持ち戻し免除の意思表示の方式

生前贈与の場合

生前にお金をもらっていた(生前贈与)の場合、持ち戻し免除の意思表示に特別な方式は必要ありません。

贈与と同時でなくてもいいです。
明示の意思表示でなくても構いません。

ただし、口頭だと言った言わないの問題になります。
何らかの書面がないと、証明をするのは困難といえます。

遺贈の場合

遺言書でお金をもらう(遺贈)の場合、考え方が分かれています。

一つ目は、遺贈が遺言という形式でなされる以上、持戻し免除の意思表示も遺言によらなければならないとする考え方です。

二つ目は、遺言の方式に限られないとする考え方です。

この点、大阪高決平成25年7月26日は、以下のように判断しました。
・持ち戻し免除の意思表示に遺言という方式は必要ない。
・しかし、遺贈が遺言という方式でなされる以上、生前贈与の場合に比べて、より明確な意思表示が必要。

ですので、遺言書に持ち戻しの免除の意思が書いていない場合、(黙示の)持ち戻し免除の意思表示が認められるためには、生前贈与の場合よりも明確な意思表示の存在を証明する必要があると考えた方がいいでしょう。

持ち戻し免除の意思表示はどうやって証明する?

明示の意思表示

遺言書など書面に特別受益として持ち戻す必要はないと書いてあれば、持ち戻し免除の意思は明らかです。これを明示の意思表示といいます。

明示の意思表示があれば、持ち戻し免除の意思表示の証明は容易です。

黙示の意思表示

問題となるのは、書面に書いておらず、持ち戻し免除の意思表示があったと推測する場合です。これを黙示の意思表示といいます。

周辺事情から持ち戻し免除の意思表示を推測しますので、相続人間で見解の相違が生じやすい論点です。

重要なポイントは、特定の相続人に「相続分以上の財産を相続させようとしていたことを推測させる事情」の有無です。

贈与の内容・価額、贈与がなされた理由、亡くなった人や贈与を受けた相続人の生活関係、亡くなった人や相続人の職業・経済状態・健康状態、他の相続人が受けた贈与の内容・価額などといった様々な事情を考慮して推測します。

逆に言えば、このような様々な事情を裏付ける証拠をいかに確保できるかで勝敗が決まります。

具体的には、以下のような事情があれば、(黙示の)持ち戻し免除の意思表示が認められやすいと考えられています。

  • 家業を継がせるため、家業に必要な財産を相続させる必要がある場合

  • 亡くなった人が生前贈与の見返りとなる利益を受けている場合

  • 特別な生活保障のために相続分以上の財産が必要な場合(病気など)

  • 特定の相続人だけでなく、相続人全員に生前贈与や遺贈をしている場合

配偶者に対する居住不動産の贈与

以上が原則ですが、居住用不動産をもらった配偶者には例外があります。

平成30年の相続法改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が他の一方に対して居住用不動産を贈与した場合には、持ち戻し免除の意思表示が推認されることになりました(民法903条4項)。

原則として持ち戻し免除の意思表示があったことになりますので、居住用不動産をもらった配偶者の場合、反論は楽になります。

相続の正しい理解が大事

持ち戻し免除の意思表示という反論を知っておくだけでも、なんとなくの感覚で相続分を減らすことを避けられます。

しかも、「お金をあげた本人が相続分を減らさなくてもいいよと考えていたこと」を明らかにすればいいだけですので、内容自体は、そこまで難しいわけではありません。

もちろん、さらに進んで相続のことを知っておくに越したことはありません。
相手とやり合うための知識をもっと身に着けたいという人は、

弁護士が答える相続問題Q&A

法律相談コラム

をご参照ください。もちろん、全て無料で提供しています。

あなたが形だけの円満相続で後悔せず、「普通の相続」を実現することを祈っています。

もし話し合いの進め方で悩むことがあれば、遠慮なくご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。

品川 相続 弁護士

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