預金の使い込み(使途不明金)

遺産の使い込みの証拠を手に入れ、裁判で証明する方法

預金の使い込み(使途不明金)

亡くなった母の通帳を見ると、ATMで50万円ずつ何度も引出しがあります。介護をしていた兄を問い詰めましたが、生活費とか介護費とか言うだけで、詳細が分かりません。使い込みの証拠を手に入れる方法をわかりやすく教えてください。

①預貯金口座の取引明細書、要介護認定記録、介護記録、医療記録の4点セットを取得することが重要です。

②請求先によって手続の取扱いが異なりますので、確認は必要です。

ゲートウェイ東京法律事務所の代表弁護士の髙橋と申します。

ご依頼の9割以上が相続に関する案件で、特に遺産分割、遺留分請求、使い込み問題に力を入れている「相続に特化した弁護士」です。

今回は、

遺産の使い込みの証拠を手に入れ、事実関係を明らかにしたい人

に向けたお話になります。

もめないことが何よりも大事な人であれば、ここから先のお話には価値がありません。申し訳ありません。

しかし逆に、形だけの円満相続で後悔したくない、キッチリした「普通の相続」を実現したいのであれば、これを知っているだけであなたの相続は変わります。しかも、ポイントだけであれば、意外とカンタンな方法です。

使い込みを明らかにするには証拠が必要

「兄弟から遺産の目録が届いたけど、思っていたよりもやけに預金が少ない…」

こういうことが結構あります。

そのようなとき、介護をしていた兄弟が預金を使い込んだのではないかと考えがちです。

しかし、ちょっと待ってください。
そのATMの引出し、本当に使い込みでしょうか。

預金が減る原因は、使い込み以外にも考えられます。生活費、介護・医療費はもちろん、バリアフリーリフォームの費用、介護用自動車の購入費など様々あります。

使途が不明な段階で使い込みだと決めつけてしまうと、十中八九もめます。そうこうしているうちに弁護士から通知書が届いた、なんてことにもなりかねません。

また、使い込みは、基本、請求する側が証明しなければなりません。「使い込みに違いない」と自分では確信していたとしても、裁判所を説得できるだけの材料を用意できなければ負けてしまいます。

そのため、使い込みかどうかの判断は慎重かつ冷静にすべきです。

可能な限りの証拠を手に入れ、しっかりと精査をする必要があります。

使い込み問題における「4点セット」とは?

使い込み問題では、様々な証拠を総合的に精査・分析します。
その中でも、相続人の立場で手に入れられる(可能性がある)「4点セット」というべき重要な証拠があります。

「4点セット」は、以下の証拠になります。

  • 預貯金口座の取引明細書
  • 要介護認定記録
  • 介護記録
  • 医療記録

各機関によって名称が異なりますが、上記の名称で大体話が通じるかと思われます。

なぜ「4点セット」が必要か?

預金の引出しを見つける「取引明細書」

使い込み問題で重要なのはお金の流れで、最初の起点となるのが「預金の引出し」です。
預金口座からの引出しを見つけることが使い込み問題の第一歩になります。

通帳を見れば早いのですが、過去の通帳は失くしたり捨てたりしている可能性がありますし、通帳を管理している兄弟が見せない場合もあります。

通帳を確認できない場合に、その代わりとなるのが「取引明細書」です。
相続人であれば、原則として、手に入れることができます。

取引明細書には、通帳と同様、預金の出入金が記載されています。

しかし、出金の年月日や振込先だけでなく、何時何分にどこの支店で取引したかが記載されている場合が多いです。それにより、いつ誰が引き出したのか推測できる場合があります。

たとえば、亡くなった親の生活圏とは離れた支店で預金の引出しがなされていれば、親が引き出したのではなく、兄弟の一人が引き出した可能性が高くなります。

まずは取引明細書から預金の引出しを見つけ、引出しの時期・場所から、誰が引き出したのかを分析します。

認知症の程度・生活状況などが分かる「要介護認定記録」「介護記録」「医療記録」

疑わしい預金の引出しを発見すると、とにかく向こうに説明させようと考えがちです。
全く説明しなかったり不合理な説明に終始したりすれば、なおのことです。

しかし、ちょっと待ってください。

裁判になった場合、使い込みの証明をしなければならないのは、原則として、追及するあなたの方です。疑わしい預金の引出しを指摘し、あいつが自分の懐に入れたに違いないと追及し続けるだけでは全く不十分です。

使い込み問題で重要なのは、お金の流れです。

預金の引出しだけでなく、

引き出されたお金がどこに行ったのか

を証拠によって証明する必要があります。

「そんなの引き出したやつしか分からないよ」と言いたくなるかもしれません。

もちろん、お金にGPS機能がついているはずがありません。
家庭内のことなので、目撃者を見つけるのもほぼ無理です。

お金が何に使われたかを直接証明することは、かなり難しいと言わざるを得ません。

そこで、状況証拠を積み上げて、親のために使ったのか、自分のために使ったのかを推測していきます。名探偵コナンさながらですね。

具体的には、以下のような事情を個別具体的に分析し、徐々に使い込みに迫っていきます。

  • 通帳やキャッシュカードの管理は普段誰がしていたか
  • 預金引出しの時、親はどこで何をしていたか
  • 兄弟が預金を引き出したとして、親の同意はあったのか
  • 引き出したお金をどのように使うことまで同意していたのか
  • 親にそもそも同意できる判断能力があったのか
  • 当時の生活状況で必要となる程度の金額だったのか
  • 特別な支出が必要な生活状況だったのか

状況証拠の中で、最もポピュラーなものは認知症です。

認知症が進んでいると、そもそも預金引出しの同意すらできない状態になります。
また、生活費、介護費、医療費などの日常経費以外にお金を使う場面が少なくなり、大きなお金を引き出す理由はあまりなくなります。

にもかかわらず大きなお金の引出しがある場合、被相続人のための引出しではなく、預金管理をしていた親族自身のための引出し(相続財産減らしを含む)の可能性が高くなります。

親の認知症の程度や生活状況などが分かる証拠の代表が、

  • 要介護認定記録
  • 介護記録
  • 医療記録

です。

いずれも、認知症の程度、判断能力・身体能力の程度、入院歴・病歴、当時の生活状況、預金の管理状況など、使い込みの判断における最重要の情報が含まれています(必ずではありませんが)。

認知症の程度などの状況証拠と預金引出しの時期・金額とを突き合わせ、親のための引出しか自分のための引出しかを分析していきます。

そして、ある程度のことが分かった段階で、いよいよ引き出した疑いのある兄弟に問い詰めることになります。そこまでの地ならしがとても大事です。

「4点セット」はどのように手に入れるか?

預金口座の取引明細書

取引明細書の請求先は、親の預金口座がある各金融機関です。

どこの支店でも発行手続ができるのが通常です。
近くに支店がない場合、郵送で対応してくれるところもありますので、まずは電話で問い合わせをして確認します。

しかし、ネックとなるのが取引明細書の発行手数料です。
高いところでは、3年遡るだけで1万円を超えます。

各金融機関によって料金が違いますので、どこの金融機関の取引明細書をどこまで遡って取得するかは発行手数料も考慮しながら決めます。

電話で問い合わせてもいいですが、インターネットで「●●銀行 取引明細書 手数料」と検索すれば、通常、該当ページにたどり着きます。ただし、各金融機関によって名称が異なります(預金入出金取引証明、取引推移表、取引履歴明細表など)ので、どの書類なのかは注意が必要です。

取引明細書を発行してもらうには、相続人であることが分かる資料等を提出する必要があります。通常、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本、相続人であることが分かる戸籍謄本、相続人の印鑑証明書、相続人の身分証明書があれば発行してもらえます。

もっとも、必要書類は各金融機関によって異なる場合もありますので、事前に確認することをお勧めします。

要介護認定記録

要介護認定記録の請求先は、親が住んでいたところの市区町村役場です。

もっとも、情報開示の手続や必要書類は各市区町村によって異なりますし、実際に介護していた相続人でなければ申請できないところもあります。

そもそも開示請求できるかどうかも含め、まずは電話で確認することをお勧めします。

担当部署は各市区町村によって異なりますが、「要介護認定記録の情報開示を担当している部署」と指定すればつないでもらえると思います。

なお、相続人の立場でも要介護認定記録を取得できない場合は、弁護士会照会という弁護士固有の調査方法や裁判所の証拠調べ(文書送付嘱託)が必要になります。ここも市区町村によって取扱いが異なりますので、ご注意ください。

介護記録

介護記録の請求先は、被相続人が利用していた介護施設です。

どこの施設を利用していたか分からない場合もありますが、要介護認定記録の認定調査票に記載されていますし、施設利用料の支払が口座引落しであれば、取引明細書を見れば施設名が分かります。

請求の手続や必要書類は介護施設によって異なります。

また、そもそも相続人の立場で請求できるかどうかも異なりますので、まずは電話で確認することをお勧めします。

相続人の立場で介護記録を取得できない場合の対応は、要介護認定記録と同じです。

医療記録

医療記録の請求先は、被相続人が利用していた医療機関です。

どこの医療機関を利用していたか分からない場合もありますが、要介護認定記録の主治医意見書に記載されていますし、介護記録に医療関係の記録が出てくる場合もあります。

請求者、請求の手続、必要書類が医療機関によって異なるのは介護施設と同様ですので、まずは電話で確認することをお勧めします。

相続人の立場で医療記録を取得できない場合の対応も、要介護認定記録と同じです。

使い込み問題の難しさ

使い込み問題の難しさは、肝心の親が亡くなっているため、真相が必ずしも分からないことです。

大きなお金の引出しの場合、何か特別な理由があるはずですので、比較的分かりやすいです。

しかし、小口の引出しの場合、たとえ合計金額が大きくなったとしても、お金の使い道は様々考えられるため、使い込みかどうかの判断は難しくなります。

よく分からない段階で使い込みだと決めつけてしまうと、十中八九もめるため、相続が全般的に止まります。使い込み問題では特に、細心の注意を払って慎重に進める必要があります。

また、疑わしいことはたしかでも、裁判では証明し切れないという場合もよくあります。手持ちの証拠と相手方との交渉状況からどのようなカードとして使うか、どこでカードを切るか、どこで見切りをつけるか、合理的で冷徹な戦略が必要になります。

実は、最も難しくて悩むのは、使い込みの証明よりもカードとしての使い方です。

相続の理解が大事

使い込みの証拠や証明の方法を知っておくだけで、前のめりで追及し、相続が止まってしまうということを避けられます。一部、難しい部分もありますが、ポイントだけであれば、素人でも何とかなるレベルです。

もちろん、さらに進んで相続のことを知っておくに越したことはありません。
相手とやり合うための知識をもっと身に着けたいという人は、

弁護士が答える相続問題Q&A

法律相談コラム

をご参照ください。もちろん、全て無料で提供しています。

あなたが形だけの円満相続で後悔せず、キッチリした「普通の相続」を実現することを祈っています。

もし話し合いの進め方で悩むことがあれば、遠慮なくご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。

品川 相続 弁護士

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